愛というやつは








愛というやつは

御高祖頭巾をかぶった

すり足の女のように



しおらしく近寄ってきて

ひやっこい 白い手で

きゅっと手の甲をつねったり

嬌声をあげて

肩に顔をしなだれかけたり



こっちが

すっかり安心したところを見計らって

その太い腕をあらわにするんです



気が付いたときには

もう遅いんですよ

太くて 毛むくじゃらの腕に

力こぶを隆起させて

愛は

私をがんじがらめにするんです



無遠慮に 私の体をひっつかみ

ここが汚れている

あそこが曲がっている、と

洗濯板でがしがし

のし棒でごりごり



私の大事な

慣れ親しんだ汚れを

すっかり落としてしまうんです



そうしておいて

四角い箱に

やたらめったら

私を仕舞い込もうとするんですよ



あなた、

気をお付けなさいよ

愛というやつは

みてくれは可愛らしいけれど

そんなやつなんですよ













※御高祖頭巾…おこそずきん

 女性の用いた頭巾のひとつ。四角の布に耳へ掛けるための紐(ヒモ)をつけたもの。目のまわりだけ出して頭部全体を包む。主に防寒用。宝暦(1751- 1764)頃から明治時代まで行われた。袖頭巾。



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