利腕








ある 空の晴れた6月

私は利腕を切り落とした



おかしなことに

切り落とした腕は

しなびるどころか

私の肩からはえていた時より

つやつやと血色も良く



反対に、私のほうが

しわ深く縮こまって

ところどころ茶色く陥没し

指で押してみると

たやすく痕が残るのだ



私は その利腕を

アパートの裏に埋めた



私の隣で 黒いフードをかぶった番人が

その様子を見ていた



穴を掘る残った方の腕が

ぎこちなくシャベルを持つ



土くれにシャベルが当たるたび

指先がしびれるような痛みを感じた



頭の中では

「もうやめよう」

「これ以上は無理だ」

「そんなことをしたら死んでしまう」

という声が繰り返しするのに



番人の 白目の黄色い

緑色の瞳にみつめられると

あきらめて

土に向かい



そうしてとうとう

私の利腕は見えなくなった



もうあれからどれくらい経っただろうか



今でもあの利腕が

創り出したものを

忘れることができない



しかし 私の利腕は

永遠に失われ

もどってくることはない



私は萎えてしまった足で

ふるえる腕で

創り続ける



それだけがあの利腕への

弔いである













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